医療福祉の税務情報
医療福祉の税務情報
文書作成日:2019/08/15


 今年の10月1日からいよいよ消費税の税率が8%から10%へと引上げられます。これに伴い、軽減税率制度が開始することで、複数税率となります。福祉施設に関して、消費税の軽減税率制度の対象として最も注意すべき点は、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などを運営している場合の、入居者への食事の提供です。
 そこで、軽減税率制度の概要を確認しながら、この入居者への食事の提供に関して、確認をしておきましょう。


 令和元年10月1日より、消費税の税率が合計8%から10%へと引上げられるのと同時に、軽減税率制度が開始します。この軽減税率制度の開始により、大きく次の3点が変わります。

1.複数税率の開始

 軽減税率制度が開始されると、次の軽減税率対象品目について、軽減税率8%が適用されます。

  1. 軽減税率対象品目:
  2. 食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類、外食やケータリング等を除く。)
  3. 週2回以上発行の定期購読契約に基づく新聞

 つまり、標準税率10%とこの軽減税率8%との複数税率となります。

現行 令和元年10月1日〜
標準税率 軽減税率
消費税率 6.30% 7.80% 6.24%
地方消費税率 1.70% 2.20% 1.76%
合計 8.00% 10.00% 8.00%

2.税額計算

 複数税率となることで、税率ごとに区分して税額を計算します。

3.帳簿及び請求書等の保存方式の改正

 上記2.の税額計算を行うために、税率ごとに区分して経理(以下、区分経理)します。この区分経理に対応するよう、これまで支払った消費税を仕入税額として控除するための“仕入税額控除の要件”であった帳簿や請求書等の記載と保存(請求書等保存方式)が、次の期間に応じてそれぞれの方式へと改正されました。

  1. 〜令和元年9月30日:請求書等保存方式
  2. 令和元年10月1日〜令和5年9月30日区分記載請求書等保存方式
  3. 令和5年10月1日〜適格請求書等保存方式

 参考までに、現行の請求書等保存方式と区分記載請求書等保存方式との違いを次に示します。

請求書等保存方式 区分記載請求書等保存方式(※1)
帳簿 @課税仕入れの相手方の氏名又は名称
A取引年月日
B取引内容
C対価の額
左記@〜Cに加え
D軽減税率の対象品目である旨
請求書等 @請求書発行者の氏名又は名称
A取引年月日
B取引内容
C対価の額
D請求書受領者の氏名又は名称(相手が不特定多数の場合は省略可能)
左記@〜Dに加え(※2)
E軽減税率の対象品目である旨
F税率ごとに合計した税込対価の額
※1 現行と同様、3万円未満の少額取引や自動販売機からの購入など請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由があるときは、請求書等の保存は求められない。
※2 EFの記載がないときは、交付を受けた側が追記可能。


1.売上に軽減税率の対象となるものがあるかどうか確認

[1]“利用者選定による特別なサービス”に注意

 介護保険法に基づく一定のサービスや、社会福祉法に基づく社会福祉事業などを行っている場合には、利用者選定による特別なサービスを除き、原則として消費税は非課税となっています。

 そのため、消費税が課税となる「利用者選定による特別なサービス」のうち、一定の食品の譲渡に該当する部分があれば、その部分は軽減税率の対象となりますので、ご注意ください。

[2]有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅等の事業者が行う食事提供に注意

 他方、たとえば有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を事業運営している場合には、消費税は基本的に住宅費等を除き、課税として取扱っていることと思います。

 軽減税率制度は、先述のとおり、一定の食品の譲渡が対象です。この一定の食品の譲渡には、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅等の事業者が行う食事提供(以下、飲食料品の提供)が、一定の条件付きで含まれています。これは、小中学校などで提供される食事についても、同様です。

 この軽減税率の対象となる飲食料品の提供について、有料老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅ごとに、対象となる範囲を以下にまとめました。

[3]上記[2]の軽減税率の対象となる「限度額」

 上記[2]の対象となる範囲について、一定の入居者に対する飲食料品の提供分全てが無条件で軽減税率の対象となるわけではありません。軽減税率の対象となる金額には「限度額」が設けられています。

限度額=

その飲食料品の提供金額(税抜き)のうち、1食あたり640円以下あるもののうち、その日の最初に提供された飲食料品の対価の額から累計した金額が1,920円に達するまで

 この場合、累計の対象とする飲食料品の提供を、あらかじめ書面で明らかにしているときは、その対象のみ抽出して累計額を計算します。

[計算例]

 朝食500円 昼食550円 おやつ500円 夕食640円の場合(全て税抜き)

@あらかじめ書面で計算対象を明らかにしていない場合

 朝食500円+昼食550円+おやつ500円+夕食640円=2,190円>1,920円

∴朝食500円+昼食550円+おやつ500円=1,550円…軽減税率(8%)対象
夕食640円…標準税率(10%)対象

 1食あたり全て640円以下のため、朝から順に足していきます。
 夕食を足すと1,920円を超えてしまうため、夕食の手前までが軽減税率の対象となります。


Aあらかじめ書面で、計算対象を「朝食・昼食・夕食」と明らかにしている場合

 朝食500円+昼食550円+夕食640円=1,690円≦1,920円

∴朝食500円+昼食550円+夕食640円=1,690円…軽減税率(8%)対象
おやつ500円…標準税率(10%)対象

 おやつは、書面で計算対象に含まれていませんので、必ず標準税率です。

[4]上記[2]の留意点

 上記[2]の軽減税率の適用は、設置者(運営者)が行う飲食料品の提供であるため、調理業務を他の事業者へ委託している場合の、当該委託に係る業務料金の支払については、軽減税率の対象とはなりません。その点はご留意ください。

2.日々の取引で軽減税率対象か否かの確認

 福祉施設自体が軽減税率対象品目を取扱っていないとしても、消費税を申告している場合で、簡易課税制度の選択適用をしていないときに、令和元年10月1日以降に仕入税額控除をするためには、上記「区分記載請求書等保存方式」の要件を満たさなければなりません。
 たとえば、入居者用の飲食料品の購入や従業員へのおやつ用茶菓子代、談話室用の一定の定期購読契約に基づく新聞代などの支出がある場合には、軽減税率対象品目の経費が発生することとなるため、区分経理が求められます。そのため日々の取引で、軽減税率の対象か否かを確認する必要があります。

3.区分経理を行い、帳簿等を保存

 区分経理が発生する場合には、軽減税率対象部分について、これまでの帳簿処理に加え、軽減税率の対象品目である旨を記載しなければなりません。
 また、原則として区分経理をした帳簿や、必要事項が記載された請求書等の保存が必要となります。

 なお、消費税の免税事業者であっても、軽減税率対象品目を販売している場合には、購入者から区分記載請求書等の発行を求められる可能性があります。「軽減税率対象品目を販売しない」あるいは「消費税は納税しない」といって、軽減税率制度への対応を全く準備しなくていいわけではありません。軽減税率対象品目と対応すべき内容を確認しましょう。


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